春や昔の夢のやう

小林秀雄を学ぶ池田塾に通う、歌と物語がすきな塾生の雑感です。

2014-01-01から1年間の記事一覧

上海とコスモポリタン(再)

タクシーは観光スポットを通りすぎ、中心地へと向かっていた。窓の外を私はじっと眺めている。雲の隙間からさしこむ光に、街全体が包まれていく。想像していたよりずっと速く、あっという間に懐かしさが立ち上がる。私は驚き、心なしか身体が火照った。早く…

「思い出す」こと

「思い出す」という言葉を小林秀雄は度々使う。 たとえば本居宣長の奥墓(おくつき)。本居宣長にはお墓が二つある。家族のお墓と、自分だけのお墓とされる奥墓。奥墓は山の奥にひっそりとあって、シンプルなお墓と、自筆の墓標と、生前大好きだった桜の木が…

ダイアログ・イン・ザ・ダーク/ひとは暗闇を必要としている

少し前になるが、茂木健一郎さんのtwitterでのお勧めで、ダイアログ・イン・ザ・ダークに行ってきた。 ダイアログ・イン・ザ・ダーク ダイアログ・イン・ザ・ダーク 8人のグループで一筋の光も見えない真っ暗闇に案内され、視覚障害者のスタッフの方を案内…

上海とコスモポリタン

空港を下りて乗ったタクシーが走り出した瞬間から、空から降るいくすじもの光に街が包まれていくのを見て、なんとなしに旅の成功を予感した。 8年振りの上海。 突如訪問を思いついたのは、休職中で親が飛行機代を工面してくれたからだったが、小林秀雄を勉…

「サマーウォーズ」の奇跡

「サマーウォーズ」、この作品を見逃していたことに罪悪感すら感じる。 映画「サマーウォーズ」公式サイト 映画「サマーウォーズ」公式サイト 世界中の人々が集うインターネット上の仮想世界OZ(オズ)。ユーザーはパソコン、携帯電話、テレビなどから自分の…

映画「大いなる沈黙へ」

映画「大いなる沈黙へ」 http://www.ooinaru-chinmoku.jp/ 修道院の生活を撮ったドキュメンタリー映画。 フランスアルプス山脈に建つグランド・シャルトルーズ修道院は、カトリック教会の中でも厳しい戒律で知られるカルトジオ会の男子修道院である。修道士…

文化と栽培と運命について

昨日の新潮講座「小林秀雄 日々の言葉」は、私のなかで記念碑的な会となった。 いちばん印象的だったことを書きのこしてみたい。 それは[culture]の話だ。 cultureには、「栽培」という意味がある。[culture]を、「文化」と訳すことで、その「栽培」の意味あ…

脱・スマホはじめました。

突然ですが、脱スマホ&脱常時接続、はじめました。 きっかけとしては昨日、携帯の充電が完全にきれまして、約10時間くらい、インターネットおよびスマホに接していなかったこと。 その日はすごく久しぶりに、知らない映画館にスマホなしで行くという冒険…

いろいろな神様たち

近頃、出版社の方々とお話する機会が増えているのですが、 昨日の講座の懇親会で、編集部の方にいろいろお話をおうかがいしていたら、僕たちの先輩には神様がいっぱいいる、というお話になった。 小林秀雄の時代には、志賀直哉、川端康成、三島由紀夫など、…

料理が好き。

何事もそうですが、毎日続けていくとどんどんいい感じになっていく気がします。知識も感覚も蓄積されていくし、できることが増えれば自由になっていく。料理もそうで、例えば毎日卵焼きを作っていたら、火加減とか混ぜ方とか調味料とか切り方とか、少しずつ…

普賢象

わたしたちが池田塾に通う山の上の家に、八重桜が咲きました。 普賢象というそうですが、この桜は、めしべの形が、普賢仏の乗る象のように見えることから、そう名付けられているそうです。生前、小林秀雄はこの桜を大変めでられていたそうで、その桜が見事に…

新たなる春に

春が待ち遠しい日々ですね。 久々の更新となります。 私はいま、小林秀雄を学ぶ池田塾に在籍してちょうど一年となるのですが、気がつけば「池田塾 本歌取歌会」の準備・取りまとめという大役を担っております。 新たなる春に、新たなる挑戦です。 本歌取りと…

インド旅日記vol.4「犀の角のようには、なれないけれど」

列車に乗って初めて、インドの土地の豊かさを知った。 車窓から広がるのは一面の緑で、景色は遠くまで見渡せる。荒んでいる地帯も、ものさみしい場所もない。 雨季のやわらかさが大地をぼんやりと包み込む。お天気雨が降っては止む。 晴れた空は蒼く遠く、雨…

インド旅日記vol.3「犀の角のようには、なれないけれど」

わたしはタンドリーチキンとナンとラッシー。 Kはタンドリーチキンとキーマカレーとナン。 タンドリーチキンは想像以上に激辛だった。おいしいんだけど、本場はすごくおいしいのだろうと期待してしまったので、辛すぎるものが苦手なので残念で仕方がない。 …

インド旅日記vol.2「犀の角のようには、なれないけれど」

2006年8月20日 晴れ 泥のように眠ったあと一夜明けて、ホテルの朝食をとってそれが届けられたときの、感動はきっとあなたにはわからないだろう。 シンプルなトーストに、ほくほくのオムレツにと、焦げ目のついたベーコン。 昨日食べたものを思い返しても、飛…

インド旅日記vol.1 「犀の角のようには、なれないけれど」

2006年8月19日 東京から飛行機で約11時間。食べて、飲み、寝る。飲み、食べて、寝る。 飛行機のエコノミークラスで課されたそれらを淡々とこなし、早くも少し負けた気分で目的地に着いた。 インディラガンディー国際空港、20時30分。 「空港についていきなり…

池田塾について、そして歌を詠うということについて。

ささやかなきっかけから、小林秀雄の編集者を長年務めてこられた池田雅延さんを塾頭とする「池田塾」に通いはじめて、はや一年が経とうとしています。 最良の意味で想像をはるかに超えたこの塾において、池田先生から学ぶ「小林秀雄の思想と言葉」を、夢中で…